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誰にでも飲みやすいワインができました。耕作放棄地を活用したぶどう農園とワイナリー—KOTOワイン盛岡

櫻田 亜貴子

櫻田 亜貴子 (お知らせ)

たくさんのりんご農園や牧草地があった緑豊かな丘陵地。矢巾町を展望できるこの場所は今、広大なぶどう農園となっています。ここで丁寧に育てられ、収穫されたぶどうは「盛岡ワイン」としてこれから日本全国・世界に発信されていきます。

広がる耕作放棄地を活用したワイナリー「KOTOワイン盛岡」。2023年12月に商品第1号を発売するまで、構想から実に7年を要したと言います。ぶどうを育て、ワインをつくり、ワイナリーを設立するまでのお話を代表の吉田千尋さんに伺いました。

身近な人が「美味しいね」といえるワインをつくろう

私は普段、ワインはあまり飲みません。「ワイナリーの代表をやっているのに!?」と驚かれるのですが、ワインに限らず、お酒自体があまり得意ではないのです。そして私の周りの人も、お酒をあまり飲まない人が多いのです。

だからKOTOワインではまずは身近な人が「美味しいね」といえるワインをつくろうと思いました。普段ワインを飲まない方にとっても飲みやすく「これなら飲みたい」と思えるようなものを目指したんです。

2023年12月に発売した第一号商品の「KOTOペティアン/リースリング・リオン」。

このワインは、りんごを煮詰めたコンポートのような風合いが特徴です。ぶどうを使っているのにりんごの風味、ということでりんご農園の跡地につくられたKOTOワインにはぴったりだと思いませんか?

微発泡のりんごジュースのような味わいなので、ワインやアルコールを普段あまり召し上がらない方でも飲みやすい仕上がりになっています。

店舗のテーマは「ガレオン船」。あえて古く見せたかった。

今回、森の音さんに建てていただいたのは工場を併設した店舗です。店舗の部分がやはり一番人の目につくところなので、こだわった部分ですね。

テーマは「ガレオン船」です。ガレオン船とは、16〜19世紀ごろにスペインやイギリスで使われていた大型の帆船です。こういう木材でできた木が好きなので、その雰囲気をお店でも再現したいと思いました。

「こういうお店にしたい!」というイメージが頭の中にあったので、それをスケッチにして共有しながら、古いガレオン船の感じを出しつつ、お客様にとっても使いやすい店舗をどうつくるかを、森の音さんと相談しながら進めていきました。

本当は「床を歩いたときにギシギシ音がでるようにしたい」とか「店の真ん中に大きなマストを立てたい」といったアイデアもあったのですが、施工上の納まりやスペースの関係で諦めました(笑)。

色々な規制がある中でも、古材のような質感が出せる木を選んでくださったり、普通の家や店舗では使わないような壁紙を見つけてきてくださったりと、私のイメージをできるだけ再現するために奮闘していただきました。

工場は「掃除のしやすさ」を第一優先に。

店舗は「ガレオン船」という見た目の印象にこだわりましたが、一転、工場は見た目ではなく使い勝手を重視しました。

食品を扱うので、衛生面は絶対です。工場では毎日水を流して掃除をします。そこで、とにかく掃除をしやすいという点を第一優先で考えました。

床は、学校の給食室のようなツルツルとした仕上げになっています。できるだけ下に物を置かないでいいように、壁にくっつける収納もあります。

また、配管(※編集注:配管は別の専門業者による施工)も壁の中に埋め込んでもらい、ほこりや汚れがたまりやすいところや、掃除がしづらいところができないように気をつけました。

はじめてのワインは即完売。2本目、3本目を準備中!

はじめてぶどうの苗を植えてから、第一号商品を発売できるまでに6年かかりました。限定100本の「KOTOペティアン/リースリング・リオン」はありがたいことに発売から1ヶ月経たずに完売となりました。

まだオンラインショップは準備中なので店舗販売のみ。さらに私が農園のほうにも出ている関係で、店舗は平日の数時間しか空けていないので「本当に売れるのかな?」という不安もあったのですが、たくさんの人が足を運んでくださいました。

中には、ぶどう畑をはじめた6年前から更新してきたX(旧Twitter)をずっと見てくださっていたという方もいらっしゃいました。

最初の一本はリースリング・リオンという品種のぶどうを使った甘口の白ワインです。今後は全く違うタイプのワインの販売も予定しており、ビターな甘口の赤ワイン(ヤマソービニオン)や、赤・ロゼ・白の辛口ワインも販売に向けて準備中です。

それぞれ品種が違いますが、すべてKOTOワインの農園で育ったぶどうでつくられています。

ぶどうは一気に収穫することができないので、広い畑すべてを1つの品種だけでやろうとすると、いい時期に収穫しきることが難しいんです。なのでKOTOワインでも収穫時期が異なるぶどうを植えて、バランスよく収穫し品質の良いものをお届けできるようにしています。

地域をつなぐワイナリーに

この地域はもともと、緑の豊かな丘陵地にいくつもの農園や牧草地があり、りんごの産地としても知られています。しかし高齢化で離農される方も増えており、年々耕作放棄地が広がりりんごの木がたくさん切られていました。

地元の問題をなんとかできないか?と「地元企業ネットワーク」の中で話し合われ、プロジェクトとしてワイナリーの立ち上げが決まりました。そこから生まれたのが「KOTOワイン」なんです。

プロジェクトがはじまり、こうして形になるまでには地元の方々のたくさんの尽力がありました。

設立までは、地元企業の方々にたくさん相談にのってもらいましたし、ワイン畑に2000本の苗を植えるときにはたくさんの方々が手伝いにきてくれました。岩手県の工業技術センターには、商品開発に協力してもらったり、一時期はそこで働きながら醸造についても学ばせていただきました。普段の畑仕事は、就労継続支援B型事業所で働いている障がい者の方たちと一緒に行っています。

つまり、「KOTOワイン盛岡」は地元の力が結集してできたワイナリーなんです。

それで「KOTOワイン」という名前は盛岡市の南東に位置する黒川・乙部・手代森・大ヶ生(旧都南村河東地区)の4地域の頭文字をとって名付けられています。

オープニングセレモニーには、地元の方々がたくさん来てくださり、改めて皆さんに支えられていることを実感しました。

これから地域をつなぎ、地域の方々を元気づけられるワイナリーとして頑張っていきます!

SHOP DATA
「KOTOワイン盛岡」

X(Twitter):@koto_wm

ホームページ:

https://koto-wine.com/

住所:

岩手県盛岡市乙部30-17-1

営業日:

平日 10時~15時

開業:2023年12月

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